300店超を抱える飲食店クライアントの「高付加価値戦略」を伴走支援「単価」と「客数」の成長を両立

背景課題
高付加価値戦略へのシフトを図っていたものの、店舗ごとの提供価値にバラつきがあり、初期の効果が十分に発揮されていなかった
プロセス
ミドルマネジメント層を巻き込んだ店舗マネジメントのPDCAサイクルの再構築に向けて、店舗課題の整理、データ分析基盤の整備、解決方法の型化を推進し、店舗ごとのサービス品質を向上
成果
高価格メニューがお客様に受け入れられ、客単価と客数の両方が向上し収益が拡大

プロジェクトの背景

飲食業界で食材コストや人件費の高騰といったコストプッシュの圧力が強まる中、収益性向上のために価格改定を行う企業が増えている。しかし、単なる値上げは顧客離れを招くリスクがあるため、提供価値そのものを引き上げる必要があった。

クライアントである全国300店舗以上の飲食チェーンは、付加価値の向上を目指し高価格帯の商品群を積極的に投入することとした。しかし店舗ごとにオペレーションやサービス品質のバラつきが大きく、これまでも同種の施策は打っていたものの効果は十分に得られていなかった。例えば、限定メニューの導入により一時的な集客には成功するものの、想定外の顧客来店による提供スピードの低下、商品提供クオリティの低下が顧客不満につながるケースが発生。その結果として、施策によってかえって顧客を逃す形となり売上が停滞する、という事象が生じていた。

これは複数店舗を統括するマネージャーの管理・改善手法に個人差が大きく存在することが一つの要因だった。つまり、各店舗で何が“課題”として認識されるか、何が優先順位を上げて対処するべきかはマネージャーによって認識が違い、そのため重要な施策の店舗展開も人によってその伝え方や注力すべきポイントなどに差がある状態だった。

こうした課題を解決し、施策が店舗に依存せず、一定水準以上のクオリティで展開され組織としてのPDCAが回る状態を作るため、「店舗課題の再定義」「データを活用したモニタリング環境の整備」「課題解決方法の型化」を軸に、店舗マネジメントの統一化を行うこととした。

プロセス

① ミドルマネジメント層を巻き込んだ「店舗課題」の再定義

マネージャーは店舗訪問時に運営状態をチェックし、指摘事項(店舗課題)を店長などに伝えるが、多くの場合、マネージャーは個々の経験則に基づいて指導を行っていたため、得意・不得意によって課題の解像度や取り上げる優先度に偏りが生じる。本企業においてもそれは同様で、例えば衛生管理などリスクに敏感なマネージャーはリスク管理を徹底するがピークの時間帯の売上は伸びない、ピークの回転率向上が得意なマネージャーはリスク管理が疎かになる、というようなバラつきが生じていた。

そこで、マネージャーを集めたワークショップを実施し、店舗課題を網羅的に洗い出し、その優先順位を整理した。

このプロセスを通じて、エリアマネージャー自身が自らの課題認識にバラつきがあることを認識し、店舗マネジメントにおける視点を広げる契機となった。

② あらゆる指標をモニタリングできる環境の整備

前述の①のステップで整理した店舗課題は、従来、売上・利益などの結果指標を除いては臨店でのみ把握できるものだったが、これを店舗訪問前に検知し、重点的に対応すべき課題を事前に絞り込めるよう、データモニタリング環境を整備した。

ワークショップで特定された課題について、その測定方法を定義し、40〜50項目の指標を設定。これらをマネージャーや現場スタッフがリアルタイムで状況把握できるダッシュボードとして構築した。

「ピーク時の人時売上」「リピート客比率」「提供時間のバラつき」などの定量的なデータを収集し、各指標をダッシュボード上で可視化したほか、直接測定が難しい「売り逃し」などについても、近似値を推定できる代替指標を設け、可能な限り定量的に管理できる仕組みを導入した。

また、ダッシュボードの開発にあたっては、エリアマネージャーや現場の意見を積極的に取り入れ、「どのデータを、どのUIで確認できると便利か」といった視点を重視。これにより、導入後の活用度が向上し、データに基づいた運用改善が各店舗で定着した。

③ 特定した課題を解決する仕組みづくり

データモニタリング環境の構築により店舗課題の把握は可能となったが、それだけでは課題は解決できないため、次のステップで課題解決プロセスの定義と、そこで活用する武器(教育プログラム)を整備した。

具体的には、ダッシュボードの活用研修を実施。エリアマネージャーがダミーデータを用いて課題を特定し、店長にフィードバックするロールプレイングを行った。加えて、課題発見後のアクションを「誰が・いつ・どのように対応するか」までフロー化し、マネージャーごとの対応にバラつきが生じないよう工夫を施した。

さらに、ダッシュボードの活用状況を定期的にモニタリングし、活用が進んでいないエリアにはフォローアップを実施。これにより、導入しただけで現場に活用されないといった課題を防ぎ、運用定着を支援した。

また、店舗課題は最終的に現場の「誰に」「何を」教えるかという教育にもつながるため、それに展開可能な教育コンテンツの整備も並行して実施し、現在も継続的に追加している。


結果:1.5〜2倍の「高価格メニュー」で単価向上、客数も同時に好調

店舗マネジメントの統一と高度化により、オペレーションのバラつきを解消し、限定メニューの付加価値を最大限に引き出せる環境が整ったことにより、開始から1年が経過し、高付加価値戦略が着実に成果を上げ始めている。特に、「客単価向上」と「客数増加」という一般的にはトレードオフになりやすい2つの指標が、同時に成長した点が大きな成果である。

具体的には「おひとり様」需要や「自分へのご褒美需要」を取り込み、高単価の季節限定メニューの売上を伸ばすことに成功。これらのメニューは、通常品の1.5〜2倍の価格設定であるにも関わらず、リピート率の向上とともに高い支持を集めた。

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